その悪魔、制御不能につき
「哉瑪くんもすっかりお兄ちゃんって感じですね」
「……そうね」
このしっかりしているのにどこか肝心なところで抜けている後輩の心の平安のためにも、息子の教育には失敗できないなと思う。
ほんと、いい子なのにあんなやつの毒牙にかかっちゃって…しかも絆されちゃってるし。私が言えることでもないけど。
「そういえば、ずっと気になってたというか、聞いてみたかったことがあるんですけど」
「何よ?」
「先輩と社長の馴れ初め、というか…大雑把なのは聞いたことあったけど詳しく聞いてないなぁと思って」
「あぁ…」
そういえば羽華ちゃんが生まれる前にちょっと話したかもしれないわ。あれね、都築さんに捕まるのを諦めなさいって最終勧告したときだわ。
まさにそのあとすぐに捕まっていたから覚えてる。完全に外堀を埋めて最速で婚姻届出した手腕はさすがと言わざるを得なかった。
「ていうか私と社長の馴れ初めなんて聞きたいものなの?軽くホラー入ってるわよ?」
「そこまでいいますか。いや、ぶっちゃけて言えば好奇心なんですけどね。わたしはあまり社長の人となりとか知らないですし」
「あー…」
まぁこの子が社長と接点ないのはある意味で都築さんと私のせいだからねぇ…仕方ないと言えば仕方ない。
それに社長にこの子をしっかり紹介したところで多分今とそんなに関係は変わらないだろう。ある意味で社長の人に対する認識っていうのははっきりしているから。
「ま、隠してることでもないしあの子たちのお昼寝の間にはちょうどいいかもね。でも後で聞かない方が良かったとか言うのはなしよ」
「さすが先輩。その潔さに惚れそうです」
「冗談でもやめて」
そんな言葉もし聞かれてたら私が都築さんに抹殺される。
「そうねぇ…まず私と社長が初めて会ったのは、」