その悪魔、制御不能につき
内心そう愚痴りつつ、空腹を感じて疲れきっている体に鞭を打ちながらなんとか立ち上がる。ここ時計ないのよ、信じられる?寝室なのにないの。おかげで体感よりも長い間ここにいるように錯覚していたが、聞いてみたら拉致から一週間も経っていないらしい。
社会人として連絡もなしに一週間無断欠勤してるんだから最悪である。その元凶がうちの社長様なので解雇はない…と思いたい。
そこら辺にあった適当な服を失敬して頭から被る。ふっ、この一週間服?下着?え、何それ?な生活をしていたので素っ裸に慣れていた自分が怖い。人間としてどうよって感じよね。
ちょうど洋服を着終わった時に寝室の部屋が開く。気怠げにそちらに顔を向ければラフな格好をした社長が「起きたのか」とさっさと私を腕に抱えてリビングの方に行った。
私だってこの移動方法何よと言いたい気持ちはあるが、限界まで体力を削られているのでもはやそう言う気力すらない。あと言っても社長は「そうか」の一言で済ませて多分私の言うことは聞かない。
ソファーに下ろしてもらいそのまま食事の準備をしてくれる社長をぼーっと見つめる。以外なことに準備、してくれるのよね…この人いいところの坊ちゃんじゃなかったっけ?
他にも普通にベッドのシーツ変えたり食器洗ったり、あと私が気絶した後の世話もしてくれたみたい。人を使うことに慣れているはずなのに自分でできるとか意外にもほどがある。
お腹を刺激するいい匂いに空腹が増す。ただでさえ体力ギリギリで食事も落ち着いて食べられなかったのだから喜びもひと押しだわ。
並べられたのは美味しそうなリゾットや分厚いローストビーフ、温野菜のサラダなどまぁどういうチョイスなのかは不明だが美味しそうだった。ていうか実際に美味しい。これ絶対高級なやつだわ。
「輝夜、」
「……自分で食べられるわよ」