その悪魔、制御不能につき
そんな風に社長のことを考えてしまったのがいけなかったのだろうか。
「………」
「ふふ、つれない態度ですねぇ。せっかく来たのですから貴女も楽しんでは?」
華麗なUターンを決める前に扉の前にいたボディーガードのような存在に阻まれて思わず舌を打った。
どうか夢であってくれという願いを嘲笑うかのように振り返った先で優雅に過ごしているのはすでに見慣れた2人。うん、昨日も一緒に仕事してたわね。
「……どうしてここに?」
「それは貴女の方に聞きたいですが、まぁいいでしょう」
不機嫌を隠さない低い私の声にも動じずに美麗な笑顔で私を迎える都築さんはゆっくりと目を細める。
曰く、少し前から私の態度に違和感を覚えて調べたところ今日のお見合いの話を知っていろいろ手を回した上で社長とともにこちらで待っていたとか。……どこから情報漏れたんだ!内緒にしててって言ったのに!
しかも私の態度に違和感を覚えたってどこによ?そこら辺にはすぐに気づきそうな都築さんがいることはわかっていたから慎重に慎重を重ねたはずなのに。
今までの経験からしてこれ以上ないほどにガンガンと警鐘が頭の中に鳴り響いている。いつもと変わらないように見えるけど怖すぎて社長の方に目を向けられない。あと無言が余計に怖い。