その悪魔、制御不能につき
◇魔性だったわ…



カタカタとパソコンのキーボードの音が部屋に広がる。さすがに慣れたけどやっぱりずっと画面見てると目が悪くなりそうだわ。


たまに視線を遠くにしつつ手は止めない。そう言えば内々に社長が変わるみたいなこと言ってた気がするわね。あれってそろそろなのかしら。



「斉木(さいき)さん。これもまとめてもらっていいかしら」


「わかりました」



資料を受け取ってとりあえずデスクの上に置いておく。見た感じ急ぎじゃなさそうだけどやれるものはさっさとやるに限るわね。いい感じに明日は休みだし今日は頑張りましょ。


カタカタと再びキーボードを弾く。まぁ社長が変わろうと何しようと私の仕事は変わらないわよね、と思っていた過去の自分が懐かしい。そしてちょっと哀れだ。



何度この時の自分に言いたくなったか。お前の日常を変える悪魔はすぐそばまで来ている、全速力で逃げろと。




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