その悪魔、制御不能につき
「皆さん、そろそろ朝礼の時間ですよ。…おや、昨日はいらっしゃらなかった人がいますね」
聞いたことのない穏やかな声が部屋に広がって静かな興奮はそのままに部屋から声が消える。振り返ればあれほど騒がれていたのはこれが理由かと納得できた。
年は私と同じぐらいだろう。しかし品のある姿はもっと成熟した大人の男性を思わせる。淡い茶色の髪に白い肌、上品な顔の作りに理知的な瞳。よく見ると左右で瞳の色が違って見えるしおそらくは外国の血が入っているのだろう。
これは騒ぐわ。むしろ騒ぐなという方が無理だわ。うん、ものすっごい目の保養。
「あぁ、そういえば昨日はお休みの方がいましたね。その人でしょうか」
「はい、斉木と言います。挨拶が遅れてもうしわけありません」
「いえ、こちらこそ急だったので気になさらなくていいですよ。副社長として就任した都築 湊(つづき みなと)と言います。これからよろしくお願いしますね」
「こちらこそ、」
緩やかに微笑んだ姿に背後の空気がざわつく。すっごくその気持ちわかる。だって背後に花が咲いてるもの。どこぞの国の貴人か。
というかこの人は社長じゃないのね。後で社長の方にも挨拶したいけど時間あるのかしら。
と思ったら朝礼後に副社長に呼ばれたのでおそらくは社長のところに行くのだろうとその後について行く。…あれ、こっち社長室じゃないけど。むしろ空き部屋では?
「いろいろありまして、あまり近いと就業中にご迷惑をかけそうだったので移動しました」
「はぁ……」