その悪魔、制御不能につき
「なんだかんだで今まで俺の前ではおとなしかったし俺の言うことも聞いてたし俺に甘いところもあったしで簡単に手放すと思ったんだが、」
返ってきたのは明確な拒否。初めてされるそれに社長は驚いて同時に苛ついた。…まぁ欲しいものは全部叶えられてきた子どもが無理だって言われたら癇癪起こすなっていう方が無理だとは思うけどね。
だんだん意地になってきて無理やり都築さんの腕の中から子猫を奪ってこいつは俺のものだ!と宣言したら。
「その瞬間ぶっ飛ばされた」
「ぶっ…?!」
飛ばされた、だと…!!?え、あの都築さんに?!?
「あぁ。文字通りボコボコにされた。しばらく熱が出て動けなかった」
「そんなに?!」
「そんなに、だ。しかも『いくら鷹斗でも私のものを取るだなんて…ふふ、前々からあなたのその態度も少し目についていたのですよ。これはお仕置きされても仕方ないですよねぇ?』って目が笑っていない顔で全力で微笑まれてから顔面殴られた」
顔面…と絶句する私に社長は遠い目をしながら続きを話してくれる。
その兆候すらなくいきなりかまされた顔面パンチに反応できるわけもなく、それによろけたところをお腹に蹴りを入れられて地面に倒れた後は一方的だったらしい。
しかもご丁寧に意識を失わせることはなく、しかし痛めつけながら、その間あの穏やかな口調でこれまでの傲慢な態度に対する批判やその他気に障っていたことをつらつら並べて、今度自分のものを取ったらこれじゃすまないからなというオブラートに包んだ脅しを懇切丁寧に説明したとか。
さすがに見つかった瞬間大人に止められて説教されたが「人のものを取ったらどうなるか教育的指導をしただけです。むしろ最近は調子に乗っていた鷹斗を止めてあげたのですから私としては感謝してほしいぐらいですが」と一貫して笑顔を崩さなかったらしい。もちろん腕の中にみぃみぃ鳴く子猫を抱きながら。
……小学生の頃からこれとか怖いんですけど、都築さん。