その悪魔、制御不能につき
「しばらくあの笑顔が悪夢に出てきた」
「でしょうね」
真剣な表情で訴える社長に私も真面目な顔を返す。私の夢の中にも出てきそうで恐ろしい。
今までも、こう、腹黒さというか、この人計算高い人だなぁと思ってたけど精神的だけではなく肉体的にも痛めつけるのにも容赦のない人だったなんて…しかもあの口調子どものときからなのね。
あの穏やかな表情と口調で目だけは絶対零度ってかなり精神的にくるものがあるだろう。もう腹黒とか超えて鬼畜ね。穏やかで紳士的な見た目なのに鬼畜。
「今はいいけどもし都築さんに好きな人できたらどうなるのかしら…」
思わず漏れてしまった言葉に社長は「さぁ?」と心底どうでも良さそうだ。一応あんたの親戚のことなんだけど興味なしね。
「湊は俺に似てるし手段選ばないしじわじわ自分色に染めて最終的には絶対逃げられなくなるだろ。あいつの一度気に入ったものに対する執着は凄まじいものがあるからな」
「実感こもってるわね」
「それで痛い目にあったから俺は湊に逆らわない。そして出来るだけ怒らせないようにしてる」
「賢明な判断だわ」
まだ見ぬ都築さんの相手にいささか同情する。自分がこうだったから尚更だ。まさか将来可愛がってる後輩が目をつけられることになろうとは現段階で露ほども思わなかったけど。