その悪魔、制御不能につき
◇せいぜい楽しませなさいよね?
「まぁ、そんなこんなで現在ね」
思ったよりも話し込んでしまい紅茶を飲んで喉を潤す。今思い出してもなんというか、波乱万丈よね。小説としてなら楽しめそうだけど現実ではもう御免だわ。
そっと目の前の後輩に目を向ければ遠い目をしていた。多分だけど自分が都築さんに捕まったときのことを思い出しているのだろう。
「なんていうか……すごいですね、先輩」
それ以外の言葉が見つかりません、としみじみ頷く気持ちはわかるけど私からしたらあんたも相当だと言い返したい。波乱万丈は然程ないけどロマンス小説とかでそういう話きっとあるわよ。
お互いがお互いの馴れ初めについてすごいと言い合うけど客観的に見たらどっちもどっちなのですぐにこの話題はやめた。そもそも相手からして規格外だったしね、それに関わるってことはそういうことになるのよきっと。
「んー、でもちょっと意外ですね」
「何がよ?」
カップを戻して後輩を見れば「湊、はまぁ片鱗見せてたので置いといて社長のことですよ」と笑う姿に思わず都築さんのそんな姿を見たことがあるのかと聞きたくなったけどとりあえず話を促す。
「いえ、わたしが知ってる社長ってこう…言い方が悪いんですけど人形みたいで、生きる上で必要な執着みたいなのが感じられない人だったので」
「あー…」
言いたいことはわかる。私だって社長と関わることがなかったらそういう判断を下していただろうし。
まぁ、ただ。
「社長と都築さんって血の繋がりがあるのよ」
それだけで説明がつくわ、といえば「言いたいことはわかります」と真面目な顔で返された。うん、そうなるわよね。