その悪魔、制御不能につき
「社長にとっては内側にいる人以外は全部同じ、どうでもいい存在なのよ」
「んー、湊もそういうとこあるかもです。どうでもいいっていうか…わたしや羽華を大切にしてくれてるのはわかるんです。でも副社長という立場としては社員を大切にはしてるけど、それも人扱いというより、駒扱い?みたいな?」
「わかるわ」
まさにそんな感じよね、と頷く。先に弁解しておくけどこれ悪口じゃないのよ、純然たる私たちからしてみたときの事実だから。
「その代わり内側に入れられたらこれでもかってぐらいなんだけど」
「ギャップすごいですよねー」
あはは、と出てくるのが乾いた笑いっていうのがなんか虚しいわね。
カチャ、とリビングの扉が開いて顔を向けると哉瑪が顔を覗かせた。あら、もうそんな時間なのね。
「もうお昼寝はいいの?」
「うん。りんちゃん、うーが泣いてる」
「えっ?あ、ちょっと待っててっ」
慌てて部屋を出たその先から確かにふにぁあっ、と泣いてる声が聞こえる。そのあとすぐに宥めるようなあやすような後輩の声も。ほんと、母親って感じね。
隣に哉瑪を座らせてトイレや喉の渇きについて聞く。どうやらトイレは勝手に行ってきたらしい。私が知ってる5歳児ってこんなにしっかりしていたかしら?まぁ社長の子どもだと思えば納得だけど。