その悪魔、制御不能につき



どういう意味だろうと思ったがとりあえず口には出さず、その答えはいつの間にやら社長室になっていた部屋に入った瞬間に理解した。


副社長の後に続いて中に入ればそこにはデスクについてなにかの資料を読んでいる男性の姿が。たったそれだけの姿なのに不思議と目が惹きつけられるような魅力があった。



「社長、昨日顔合わせできなかった秘書課の方がいらっしゃいましたよ」


「あぁ」



向けられた視線にぞくりとする。恐怖とかではなく、どちらかと言えば畏怖、だろうか。無意識に手を伸ばしてはいけないという気持ちになる。


副社長とは違い、艶やかな黒髪に黒い瞳はれっきとした日本人だけど肌の白さはどこか似通っているかもしれない。老若男女見惚れる美貌というのはこういうことをいうのだなとしみじみ思う。


副社長も見る人が見惚れる容姿だけどジャンルが全く違うというか、この人が王子さまなら社長は悪魔っぽい。つまり人外じみてる…?いや、これは失礼すぎる。口に出してないからセーフ、よね。



「昨日は知らなかったとはいえ挨拶にも出向かず申し訳ありませんでした。秘書課に勤める斉木です。これからよろしくお願い、」



言いながら頭を下げるがカタリ、という微かな音に驚いて思わず少しだけ視線をあげると目の前に黒があってビクッとした。え、さっきまでデスクに座ってたわよね?



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