その悪魔、制御不能につき
よく、なぜ私だったのかと妻は言う。何もしていないのになぜ自分を俺の世界の中に、それも一番近くに置いたのかと。
人を好きになるには何かしらのきっかけがあるものだ。それは容姿だったり声や持っているステータス、性格というものもあるだろう。性癖というファクターもあるかもしれない。
それと同じで俺が妻を欲しいと思ったのは彼女のあり方が好ましいと思ったからだ。ただこれは後から冷静に自分を振り返ってみたときに思ったことだが。
容姿も声も良いと思った。だがそれよりも強く胸に刻まれたのはその雰囲気。もっと言うのなら魂とでも言うのだろうか。抽象的で理解できないと言われたが俺の中では揺るぎない事実なのでそう言われても困る。
何者にも揺るぎない、一本芯の通った凛としたあり方に惹かれた。彼女ならば俺のことを受け入れると思った。彼女ならばきっと俺の想いを受けても壊れないとわかった。
彼女こそが、自分の隣にいるべきだと感じた。
湊と会った時にも感じたこれが、恐らくは本能というものなのだろう。会った瞬間にそれが自分のものである、もしくは自分のそばにあるべきものであると理解する。
感覚的なもので他者からは理解できないだろうが別に構わない。これは自分だけが理解していればいいものだ。