のばら
電車か、バスか、自転車か。
その中のどれかが、生徒の通学手段だ。
あたしは、自転車だった。ーーーーそして、のばらも。
神が、あたしに味方してる。そう思った。
樹里も亜由美も電車通学だったので、放課後はあたしがのばらを独占できる。
のばらのリクエストで、あたしたちはしょっちゅう自転車を漕いで海へ走った。
のばらは、海をこよなく愛していた。

学校から海へつながる道の途中にあるコンビニで、のばらはジンジャーエールを、あたしはコーヒーを買う。
のばらはコーヒーが飲めないし、あたしは炭酸が苦手だった。
「千代子、よくそんな苦いの飲めるよね」
レジを離れた瞬間に、のばらはそんなことを言う。
「受験前なんて、一晩で三杯は飲んでたよ」
「うえー、大人!」
大きな目をさらに丸くしてみせる。

初夏の日本海は、砂浜に躍りでるあたしたちを「またおまえたちか」という顔で迎えた。
いつものようにさんざん波打ち際を走り回ったあと、テトラポッドによじ登って休んだ。
ざぱん。ざぱん。
寄せては返す波を見ながら、のばらはジンジャーエールを、あたしはコーヒーを飲むのがいつものスタイルだ。
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