のばら
「こういうの、青春って感じだよねー」
ハイソックスを履いた長い両脚をぶらぶらさせながら、のばらはそんなことを言う。
昨日、あたしが付き合って一緒に選んだ、チャコールグレーのハイソックスだ。
ついでに、彼女の唇を彩っているコーラルのリップも、あたしが選んであげたものだ。
「そうかな」
「そうですよ。おーーいっ!」
誰もいない海に向かって、のばらは叫ぶ。
普通の子がやったらドン引きされてしまうような言動を、彼女は平気でする。
「青春」なんて文字通り青くさい言葉も、彼女が口にした瞬間におかしいものではなくなってしまう。
ああ、ずるいな。のばらは、ずるい。
彼女が身につけているものの多くを選んでいるのはあたしなのに、クラスのみんなは全部のばらのセンスだと思ってる。
それでも構わない。
あたしがのばらに影響できる、そのことがとにかく嬉しかった。
これでいい。
今は、まだ――――。
「ちょっと早いけど、そろそろ帰ろっかな。お母さんの誕生日なんだ」
「えー、千代子はほんとにお母さん好きだよね」
世界中を味方につけて生まれてきたような彼女の隣りで、あたしも精いっぱい明るく笑うのだ。
ハイソックスを履いた長い両脚をぶらぶらさせながら、のばらはそんなことを言う。
昨日、あたしが付き合って一緒に選んだ、チャコールグレーのハイソックスだ。
ついでに、彼女の唇を彩っているコーラルのリップも、あたしが選んであげたものだ。
「そうかな」
「そうですよ。おーーいっ!」
誰もいない海に向かって、のばらは叫ぶ。
普通の子がやったらドン引きされてしまうような言動を、彼女は平気でする。
「青春」なんて文字通り青くさい言葉も、彼女が口にした瞬間におかしいものではなくなってしまう。
ああ、ずるいな。のばらは、ずるい。
彼女が身につけているものの多くを選んでいるのはあたしなのに、クラスのみんなは全部のばらのセンスだと思ってる。
それでも構わない。
あたしがのばらに影響できる、そのことがとにかく嬉しかった。
これでいい。
今は、まだ――――。
「ちょっと早いけど、そろそろ帰ろっかな。お母さんの誕生日なんだ」
「えー、千代子はほんとにお母さん好きだよね」
世界中を味方につけて生まれてきたような彼女の隣りで、あたしも精いっぱい明るく笑うのだ。