のばら
期末テストが終わったことを祝して、のばら、樹里、亜由美、あたしの4人で土曜日に遊びに行こうという話になった。
と言っても、この地方都市では駅前まで出たところで娯楽施設などたかが知れている。
映画でも行く? えー、今って何上映してるっけ、カラオケでよくね? あたしパフェ食べたい。あたしたちは生まれたての小鳥のように賑やかに笑いさざめきながら教室を出る。

この週末から少し経てば、まぶしい夏休みが口を開けて待っているのだ。
試験の結果なんて、今はどうでもいい。世界のすべてがきらきらして見えた。
廊下の窓ガラスから差しこむ夏の光が、制服の袖から伸びるあたしたちの腕にまだら模様を作る。
ああ、こういう瞬間こそが青春っていうやつじゃないのかな。

昇降口へつながる廊下で、声をかけられた。
「ちょ、ちょっとすみません」
振り向いて、わたしは小さく息を飲んだ。
隣りのクラスの時田昂大だ。
体育が2クラスずつの合同授業なので、週に数回は隣りのクラスと交流がある。
時田くんは特別目立つ男子ではないけれど、その整った顔立ちや品の良い雰囲気、知的な笑顔が、いつからかひそかに気になっていた。
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