のばら
先月の体育のとき、男女混合バスケであたしは時田くんと同じチームになった。
コートの中ではあわあわして全然動けなかったけど、たまたまゴール近くにいたときにボールが回ってきて、うまいこと味方の男子にパスを出すことができた。そのボールは彼のシュートにつながった。
時田くんは「ナイッシュー!」と叫んで仲間を讃え、それからあたしと目が合うと、にっと笑った。
きっと、気のせいじゃない。
少なくとも彼は、あたしのことを認識してくれているはず。
そう思うと試験勉強も手につかなくなった。
だけど――――。
「さ、佐々木さん」
時田くんの視線はあたしを通り抜けて、その隣りののばらを捉えていた。
「はい」
のばらは不思議そうに時田くんの顔を見て、誰だっけ? と表情であたしに問いかけてくる。
樹里と亜由美は一歩下がり、顔を見合わせてにやにやしている。あたしは、めまいがした。
「あ、あの、今、彼氏とかいますか」
真っ赤な顔でのばらに話しかける時田くんを視界に入れたくなくて、あたしはのばらの足元あたりを見つめながら、他人の愛の告白を聞いた。
さっきまでの浮き立った気持ちが霧散して、心に重苦しい闇が立ちこめた。
コートの中ではあわあわして全然動けなかったけど、たまたまゴール近くにいたときにボールが回ってきて、うまいこと味方の男子にパスを出すことができた。そのボールは彼のシュートにつながった。
時田くんは「ナイッシュー!」と叫んで仲間を讃え、それからあたしと目が合うと、にっと笑った。
きっと、気のせいじゃない。
少なくとも彼は、あたしのことを認識してくれているはず。
そう思うと試験勉強も手につかなくなった。
だけど――――。
「さ、佐々木さん」
時田くんの視線はあたしを通り抜けて、その隣りののばらを捉えていた。
「はい」
のばらは不思議そうに時田くんの顔を見て、誰だっけ? と表情であたしに問いかけてくる。
樹里と亜由美は一歩下がり、顔を見合わせてにやにやしている。あたしは、めまいがした。
「あ、あの、今、彼氏とかいますか」
真っ赤な顔でのばらに話しかける時田くんを視界に入れたくなくて、あたしはのばらの足元あたりを見つめながら、他人の愛の告白を聞いた。
さっきまでの浮き立った気持ちが霧散して、心に重苦しい闇が立ちこめた。