のばら
のばらが男子から告白されるのは、もちろん初めてではなかった。
その強いオーラに臆してか、美貌の割には多くない気がするけれど、ひと月にひとりかふたりほど猛者が現れた。
その中には学年で有名なイケメンもいたけれど、のばらは「ピンとこない」「付き合うって、何すればいいの?」などと言っていずれも断ってしまっていた。
そう、あたしは知っていた。
のばらが恋愛に奥手なことを。
時田くんがうつむき気味に歩き去ったのを見て、3人でのばらに駆け寄った。あたしの足は、鉛のように重かった。
「少女漫画みたーい、さすがのばら」
「また振っちゃったのお?」
亜由美と樹里がのばらと話す声が、遠い海鳴りのように聞こえる。
「もちろん」
のばらの声に、邪気はなかった。
「どうして好きでもないひとに友達といる時間削られなきゃいけないの。ねっ」
のばらがそのしなやかな手であたしの腕を引っぱるようにつかんだので、あたしは少しよろけた。
「…付き合えばいいのに」
「え?」
「付き合っちゃえばいいのに、たまには」
思いきり不機嫌な声を出してもよかったのに、結局あたしは語尾を明るめに微調整してしまう。
その強いオーラに臆してか、美貌の割には多くない気がするけれど、ひと月にひとりかふたりほど猛者が現れた。
その中には学年で有名なイケメンもいたけれど、のばらは「ピンとこない」「付き合うって、何すればいいの?」などと言っていずれも断ってしまっていた。
そう、あたしは知っていた。
のばらが恋愛に奥手なことを。
時田くんがうつむき気味に歩き去ったのを見て、3人でのばらに駆け寄った。あたしの足は、鉛のように重かった。
「少女漫画みたーい、さすがのばら」
「また振っちゃったのお?」
亜由美と樹里がのばらと話す声が、遠い海鳴りのように聞こえる。
「もちろん」
のばらの声に、邪気はなかった。
「どうして好きでもないひとに友達といる時間削られなきゃいけないの。ねっ」
のばらがそのしなやかな手であたしの腕を引っぱるようにつかんだので、あたしは少しよろけた。
「…付き合えばいいのに」
「え?」
「付き合っちゃえばいいのに、たまには」
思いきり不機嫌な声を出してもよかったのに、結局あたしは語尾を明るめに微調整してしまう。