あの時からずっと、君は俺の好きな人。
実際、「あの子が例の事故の子だよ」とひそひそ言いながら私をチラチラ見る光景も何度も目にしているし、私と話す時に何か同情めいた目を向ける人間も多い。

中学までは、「悲劇のヒロインぶりやがって」なんて、嫌味を言われたりもしたけれど、高校になってからはみんなそんなことどうでもいいのか、何も言われなくなったけれど。


「うーん……まだ考え中」

「そっか」

「先生もギリギリまで悩んでいいって。なっちゃんもお金のことは気にしなくていいから、出発直前まで考えていいよって」


大阪も新幹線も例の件以来縁がない。6年も経っているので、イメージがぼんやりしている。

実際にあの事故に関わるそれらのものを前にして、自分がどうなるかよくわからなかった。

だから私は迷っていた。

念の為キャンセルすることも考えたけど、修学旅行に行かないとなるとなんだかんだ言ってクラスで話題にされそうな気がしたし。

ただでさえ奇異の目で見られる機会が多いのに、これ以上目立つのは勘弁だった。


「まあ、私は藍と一緒に修旅行きたいけどさ。……でも無理しないでね」

「ーーうん」


見た目は派手だけど、美結は優しい。事故の前となんら変わらず、仲良くしてくれている。

ーー私の内面は、事故の前と事故の後で別人のように変わってしまったというのに。
< 10 / 229 >

この作品をシェア

pagetop