あの時からずっと、君は俺の好きな人。
「ーーうん」


私は俯いた。ーー泣きそうだ。今まで見ないようにしていたのに。いなかったことにしたかったのに。


「どうしたの……?」


こうべを垂れる私に水野くんが心配そうに言う。


「見たくないの。ーー好きだったから、パパもママも」

「え……?」

「だから私の元からいなくなったって、思いたくないの。ーー写真を見たら思い出してしまうから、嫌なの」


私はしばらく黙ったあと、こう続けた。


「ーー大好きなのに。いきなりいなくなっちゃった。バイバイも言ってないのに。ずっと一緒にいたかったのに。……怖いの。私の周りの人がまたいなくなるんじゃないかって」


なっちゃんも美結も水野くんも……ある日突然いなくなっちゃうんじゃないかって。

だから、いなくなった両親を最初からいなかったと思い込みたかった。家族ですごした日々は、私が思い描いたただの夢だったんだと。
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