あの時からずっと、君は俺の好きな人。
ーーああ。こんな顔だったなあ。パパとママ。

そう思った瞬間、瞳からは大粒の涙が零れた。私は全身の力が抜けてしまい、その場に座り込んだ。


「……大丈夫?」


水野くんがわたしの隣にしゃがみ、不安そうに言った。


「ーーパパとママはね、私が1番の宝物だっていつも言ってくれたの」


私はつい水野くんにそう言ってしまった。

こんなこと言われても困るかな?と言った後少し後悔したが、水野くんゆっくりと頷いてくれたので、安心した。


「私も大好きだったなあ。……なんで私、大好きなのに忘れようとしてたんだろ」


色んな場面でのパパとママの表情が頭の中に浮かび続ける。笑った顔、怒った顔、心配している顔。

すべて、私を愛してくれていたから、私に向けられた顔だ。

ーー私は確かに両親に愛されていた。

今はいなくなってしまったけれど、あの二人がいたから。あの二人が10歳まで大切に育ててくれたから。

今の私があるのだ。


「私……ずっとずっと、忘れ……な、い」


涙がどんどん溢れてきて、うまく呂律が回らなくなる。すると肩と背中に優しい温もりも感じた。
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