あの時からずっと、君は俺の好きな人。
しかしなっちゃんは、「そうだよ! だって保険金はこの子が幸せな生活をするために必要だもん! 遠慮なくもらうよ!」と豪快に啖呵をきった。

パンの売れ行きが好調のため、保険金を使う機会は今のところないそうだが。


「あとでお店手伝ってくれる?」


なっちゃんは人懐っこく笑いながら言う。主にレジやパンの陳列のみだが、私はほぼ毎日お店を手伝っていた。

そりゃそうだよ、お世話になってるんだし。


「ーーうん。あ、でも宿題終わってからでいい?」

「いいよん。できれば17時くらいからお願いできるかな? お客さんいっぱい来ちゃうからー」

「おっけー」


そう言って、なっちゃんに微笑み返す。するとなっちゃんが、笑みを浮かべながらも少し真剣そうな目付きになった。


「……あ。明日の準備大丈夫?」


ーー明日は6月11日。例の事故から6回目の、6月11日。7回忌にあたる。
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