あの時からずっと、君は俺の好きな人。
この2週間、休まず毎日練習に参加した人間じゃないと、みんなの努力が報われない。

ーー毎日練習に参加した人間。

私ははっとする。

いるじゃないか。プールにこそ入っていないが、毎日みんなの練習風景を眺めて、コツや泳ぎのポイントを知っている人間が。

ーーだけど。

私はもう6年以上も水着を着ていない。かつては全国レベルのスイマーだったとはいえ、そのブランクが今の高校生達に通用するのだろうか。


「どうしたの、吉崎さん」


きっといろいろ考えている私が強ばった表情をしていたのだろう。水野くんが訝しげな顔をした。

ーー水野くん。彼のひたむきさと明るさ。逆境なんて気にしない、マイペースさ。

そして私に……パパとママの記憶が、どんなに大切で忘れてはならないことか、教えてくれた人。

さっき思ったじゃないか。彼が喜ぶ結果になればいいなって。

そしてそうするためにはーー。

「ーー私が出る」
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