あの時からずっと、君は俺の好きな人。
「最近の藍は表情が活き活きしてるように見えてさ。藍は違うって言うかもしれないんだけど、たぶん水野くんに関わってからだよね。ーーそれでさっきね、「私が泳ぐ」って言った藍の顔がね。すごく昔の藍を思い出されて。頼もしいなあって思えて。ああ、懐かしいなあ……って……」


言葉の最後の方は震えていた。美結は手で瞳からは零れ落ちる涙を拭っていた。

私はたまらなくなって、藍を抱きしめた。


「ごめんね……ずっと、待たせちゃって。ずっと、こんなに弱くなった私の近くにいてくれて」

「私こそ、ごめん……何もできなくて、何も言えなくて……。水野くんみたいに、藍を変えられなくて」


私は首を横に振る。

変わらずに明るく接してくれた美結に、どれだけ救われたことか。

めんどくさい闇を抱えた私なんかといるより、他の友達と仲良くなった方が、楽しかっただろう。

だけどずっと美結は私の横で、「早く彼氏出来ないかなあ」なんて軽口を叩いて、笑ってくれていた。


「ーー今日は頑張るよ。そろそろ行こう。練習の時間、なくなっちゃう」

「うん……」

肩を震わせている美結を促し、更衣室から出ようとする私。

美結は目をひとしきり擦ったあと、何事も無かったかのような平然とした表情を浮かべ、私に続いた。
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