あの時からずっと、君は俺の好きな人。
「ルール?」

「うん。ルールでは、泳ぐ順番は自由だったよね。そこを変えるとか?」

「うーん……でも今の順番が一番いいと思うけどなあ」


だいたいのクラスでは女子男子が交互に泳ぎ、アンカーは1番速い男子。

うちのクラスも例によって順番は男女交互で、私は第5泳者、第6泳者のアンカーはもっともタイムのいい水野くんだ。

アンカーは水野くんが適任だし、それ以外の順番を変えたところでタイムに影響があるとは思えない。


「そっか。じゃああとは……泳法が自由ってルールがあるよね。その点はどう?」

「うーん……」


水野くんの言葉に私は思考を巡らせる。

しかし泳法は、ほぼすべての人間がもっとも早く泳げるクロールしかありえない。

うちのクラスももちろん全員がクロールで泳ぐし、他のクラスもクロール以外で泳ぐ人は見たことがない。考えるまでもないことだ。

現状ですでにベストの状態だ。タイムを速くするための抜け道なんてあるのだろうか……と、私が考えていると。


『続いては2年生のリレーです』


係が拡声器を使って屋内プール中にそう告げる。

私が打開策を見つけられないまま、ついにリレーの本番が始まろうとしていた。
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