あの時からずっと、君は俺の好きな人。
私は気恥ずかしくなりながらも、微笑んで頷く。

そうだ。私は美味しいパンを作れる明るいなっちゃんに引き取られて、幸せなんだ。

パパとママがいた頃も幸せだったけれど、今だって大切にされている。

水野くんの言葉に幸福を感じられた。だけど、水野くんの微笑みに少し切なそうな影が見えた気がして、それがちょっとだけ気になった。


「あ! そうだ! これこれ!」


新田くんが大きめのコンビニの袋を出し、その中身を広げた。


「わー! 花火!」


そう、それは手持ちの花火や小さな打ち上げ花火、ロケット花火、ネズミ花火といった、数々の花火たち。


「食べ終わったらみんなで店の前の海でやろうと思って、さっき蒼太と涼太と一緒に買ってきたんだ〜」

「いいねー、やろうやろう!」


坂下さんが目を輝かせる。

ーー花火をやるのなんて、いつぶりだろう。幼い頃、パパとママとやって以来な気がする。

懐かしく優しい思い出。2人のことを思い出すのはやはり悲しさが付きまとってしまうれど、決して忘れてはならないのだ。

ーー今の私がいるのは2人のおかげなのだから。

そして一通り食事を楽しんだあと、私達は夕暮れの海へと向かった。
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