あの時からずっと、君は俺の好きな人。
あの事故の死者は700名以上。私の身近に事故の被害者の知り合いがいても、何らおかしいことではない。


「なんで親友は突然死んだんだろうって思ってたから、事故の原因や救助の状況を私は細かく知りたかった。だから手当たり次第に事故に関するテレビ番組とか、新聞記事とか、ネットの掲示板の書き込みまで、小学生の私はくまなくチェックした」

「ーーそっか。それなら私のことも必然的に詳しくなるよね」


私はあの事故を語る上では必要不可欠な存在だったから。今でもたまに記者らしき人間がなっちゃんの店に来ることがある。


「うん。吉崎さんが一人っ子のこと。同乗した両親が亡くなったこと。パン屋を営む叔母に引き取られたこと。ーー事故前はジュニア水泳の有力選手だったこともね」

「…………」


だから水泳大会の選手をお願いした時に、私の塩素アレルギーの件を疑っていたのか。

しかし私に個人的な恨みがある、と言っていた点についてはまだ理由はわからない。
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