あの時からずっと、君は俺の好きな人。



「水野くんが来ても変な事言わないでよね、なっちゃん」

「はいはい分かりましたー」


帰宅後、カウンターに立ちパン屋の手伝いをしている私。

なっちゃんは約束通りカレーパンを3個取り置きしておいてくれていたけれど、何故か異常なまでにニヤついている。

今だって商品陳列をしながらも、ときどき私の方を見ては気持ち悪いほどニヤニヤしていた。

ーー本当に私が今頼んだこと分かってるのかな、この人。


「藍なんかそわそわしてるねー」

「し、してないから。なっちゃんが何を想像してるかは知らないけど、何もないからね!」


美結や三上さんといった友達に恋がバレるのはまあいいけれど、身内に知られるのはやはり気恥しい。

しかしなっちゃんは私に疑いのまなこを向ける。


「ふーん……」

「ほんとだってば!」


私が叫ぶように否定した直後、店舗のドアが鈴を鳴らしながら開いた。
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