あの時からずっと、君は俺の好きな人。
「こんちはー」


人懐っこそうな無邪気な笑顔。少し高めだが、ハスキーな少年らしい声音。

ーー来た。水野くんだ。


「あらこんにちはー、水野くん。カレーパン取っておいたわよー」

「ありがとうございます!」


なっちゃんは先程までの気持ち悪い笑みは封印し、いつもお客さんに向けるような親しみやすいスマイルを浮かべていた。

とりあえずなっちゃんが私をからかうことはなさそうだ。あらかじめ言っておいてよかった。安心する私。

そして水野くんはカウンターまでやってきた。学校外で2人出会うのは久しぶりで、少しドキドキしてしまう。


「あ、これ、取り置きしてたカレーパンね」


カウンターの裏からカレーパンを取り出しながら私は言う。すると水野くんは嬉しそうに笑った


「おおー、うまそー。ありがと、吉崎さん!」

「ーーうん」


ーーその笑顔はカレーパンに向けられているものだろうけど。

間近で大好きな人の嬉しそうな微笑みを見れて、幸せな気持ちになってしまう。
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