あの時からずっと、君は俺の好きな人。
しかし、水野くんがいるはずの部屋の扉に貼られている紙には、彼の名前がなかった。

念の為、クラスメイトの男子全員の部屋の扉を私は確認する。

しかしやはり「水野蒼太」という名前が無い。確かに彼はこの旅行に来ているはずなのに。一緒に新幹線に乗ったはずなのに。

ーー水野くん。どこ? どこにいるの?

彼が消えてしまっているような気がして。

今日一緒に新幹線に乗って、手を握って励ましてくれていた彼が、すでに消滅してしまっているような気がして。

違うよね。ーー偶然だよね。たまたま同姓同名の人が、被害者にいただけだよね。印刷ミスで扉の紙に名前が無いだけだよね。

だって現実的にそんなことあるわけない。6年前の事故の犠牲者が、今ここに存在するなんて。

ーーだけど、もしそうだとしたら。

彼にまつわるさまざまな不思議なことの中で、説明がついてしまうものがいくつもある。

とにかく私は深夜のホテルの廊下を走り回った。

ーー彼の姿を探して。
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