あの時からずっと、君は俺の好きな人。
そして私以外のみんなには、「もし17歳の水野くんが以前からこのクラスにいたら」という記憶が、ミサンガの力で植え付けられた。

水野くんが自然にクラスに溶け込めるように。ーー彼の願いを叶えやすい環境にするために。


「6年ごしの俺の願いを、このミサンガが叶えてくれようとしているんだって分かった。だから俺は、君がくじ引きで押し付けられた水泳係に立候補して、君に近づいた。ーーその時の君はやっぱり昔と違っていて、無気力だった。でも……」

「今はそうじゃない。水野くんのお陰で」


私ははっきりと言った。水野くんが少し嬉しそうな顔をした気がした。


「ーーそう言ってくれると、俺がここに来たかいもあったなあって思えるよ。君は水泳大会の係を通じて、大会当日急遽泳いだこともきっかけで……どんどん目が輝き出したね」

「うん……」


私は頷きながら、涙ぐみそうになる。

水野くんがここにいる理由。それは事故で塞ぎ込み、後ろしか見れない私に前を向かせるため。

だが今の私はもう前を向いて歩き出している。彼の願いは叶っている。
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