あの時からずっと、君は俺の好きな人。
新田くんと水野くんが、「なんか物足りない気がしないか?」「うん。少し前までもっと賑やかだった気がするんだけどな」なんてことを2人で言っているのを見た。

三上さんと坂下さんも「水泳大会の係、もう1人いたような気がするんだよね」「私もたまに思うんだけど……なんか元気な人だったような」と言っていた(記録では私が1人で係をやり、新田くんが2回泳いだことになっていた)。

なっちゃんは「最近カレーパンが好きなかっこいい子と仲良くならなかったっけ? でも名前はなんだったかしら……」と、この前言っていた。

ーー水野くん。あなたの存在は、みんなの中にちゃんと残っているよ。

そんなことを考え、虫に刺されながら歩いてるとーー。


「……あった」


山中の少し開けた、野花が咲きみだれる場所にそれはあった。

「水野蒼太 享年11歳」と、刻まれた墓標。

周りには、小学生の男の子が好むような、色褪せたおもちゃがたくさん置かれていた。遺族がお供えしたものだろうか。


「来たよ、水野くん」
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