あの時からずっと、君は俺の好きな人。
言いながら、泣きそうになる。しかし私は堪えて、笑顔を作る。

今日は彼に元気な姿を見せに来ると決めていたのだ。泣いてはいけない。

1人でも前に進めることを、私は彼に見せなければならない。

するとどこからともなく大きなアゲハ蝶が、ヒラヒラと羽をはばたかせながら、私の鼻先を掠めた。

そして私が墓標の前に置いたカレーパンの上で、アゲハ蝶が羽を休める。

ーーああ。彼が来てくれたんだ。私はそう思った。


「相変わらず好きだね、カレーパン」


アゲハ蝶は私の言葉に返事をするかのように、羽を1度ばたつかせた。

私は首から下げたペンダントを握りしめる。

水野くんは消えてしまったけれど、彼と私を繋いだ証である、あの切れたミサンガは消えずに私の手元に残った。

これは17歳の水野くんが存在した証でもある。

私と……みんなと水泳大会の練習して、大会で2位になって、お店で打ち上げをして花火をして、大阪にも一緒に行った、証明。
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