あの時からずっと、君は俺の好きな人。
エピローグ 2012年6月 奇跡が起きるなら
気がつくと、俺は草むらの上に横たわっていた。

両親と乗っていたはずの新幹線が急にガタガタと揺れだし、猛スピードで急降下していったことは覚えている。

途中で窓から自分だけ投げだされ、新幹線が崖の下に真っ逆さまに落ちていった光景も。

ーーきっとあの状態なら、俺の両親の生存は絶望的だろう。

恐らく他の乗客もーー俺が大阪のホテルのプールで恋をした、あの子も。

そんな残酷な現実に行き着き、目の前が暗くなる。それと同時に、急に左手首に激痛が走った。

腕をおそるおそる上げて見てみると、血が手首からとめどなく溢れていた。

致命的な血管が切れてしまっているようだ。俺は外科医の父に教えて貰った応急処置の方法を必死で思い出す。

そしてとりあえず、ポケットに入れていたハンカチを取り出して、できるだけきつく腕に縛り付けて、止血をする。

ーー片手で行ったから、あまりうまくはできなかったが。

ーーすると。


「た……すけてぇ!」
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