あの時からずっと、君は俺の好きな人。
近くから女の子の声が聞こえてきた。はっとして俺は立ち上がり、声のした方へ走る。

出血のせいでふらついたが、俺は気を張ってなんとか声のありかへとたどり着いた。

声の主はーーあの子だった。

俺に生まれて初めての甘い衝撃を与えてくれたあの子。

プールで優雅に、人魚のように泳ぐその姿が頭からどうしても離れず、これが恋だと俺は初めて知った。

彼女は新幹線の車体の一部と思われる鉄骨に、足を挟まれて身動きが取れないようだった。

あまりよくない状況だ。

長時間体が圧迫されてしまうと、血の巡りが悪くなり足を切断する可能性も出てくるーーというようたことを、以前に父が言っていた。

俺は力を振り絞って、彼女に覆いかぶさっている鉄骨を蹴り上げた。するとうまい事言ったようで、鉄骨は彼女の上から退けられた。


「大丈夫?」


虚ろな目をする彼女の手を取り、状態を起こしてあげる。下敷きになっていた足はちゃんと動いていた。

よかった。至る所に切り傷はあるが、大きな怪我は負っていないようだ。あの状況で、奇跡としか言えない。
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