あの時からずっと、君は俺の好きな人。
「ーー大丈夫」


俺は怪我していない方の手で、彼女の手をそっと握った。

彼女は同い年くらいだけれど、手は俺より一回り小さく、驚くほど温かくて柔らかった。

すると少し落ち着いたのか、彼女の体の震えは止まった。そして彼女は瞳を閉じた。しばらくすると規則正しい寝息が聞こえてきた。

精神的にも肉体的にも、疲れていたのだろう。眠れるほど落ち着いてくれて、よかった。

ーーだけど。

俺の方はもう限界だった。気休め程度の止血なんて、ほとんど効果がなかったようだ。

かすみがかっていく視界の隅に、新大阪駅で拾ったミサンガが映った。

今隣にいる、この子が落としたミサンガ。返そうと持っていたのに、返せなかった。

綺麗に編まれていたミサンガは、事故の衝撃でボロボロになり、俺の血液も大量についていた。どの道この状態じゃ、もう返せないだろう。

ミサンガは願をかけて身につけ、紐が切れた時に願いが叶うという話を聞いたことがある。

ミサンガはかろうじてまだ切れていなかった。俺は朦朧とする頭で、青いガラス玉が通されたそれに、こう願った。
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