あの時からずっと、君は俺の好きな人。
私は三上さんの様子など気づいていませんと言うように、素知らぬ顔で言う。

こちらが及び腰になってしまったら、ますます彼女の気に触るような気がしたから。なんとなく。

ーーしかし。


「私さ、やりたくないんだよね」


つっけんどんに三上さんは言い放った。私は虚をつかれた。

三上さんの、キリッとして整った美しい顔は、冷たい表情を浮かべていた。

普段明るくて、誰にでも分け隔てなく接するイメージの三上さんとは、その様子がかけ離れていて。


「ーーえ」

「だから、やりたくないの。吉崎さんがやればいいんじゃない? 水野くんだって係やりながら選手もやるんだし」

「……でも、私は塩素アレルギーで」


私が常に水泳の授業を見学していることは、彼女も知っているはずなのに。

まあ、アレルギーは嘘なのだが。


「……それってほんとなの?」

「え?」

「アレルギーってほんとなのかって」


何が言いたいのだろう。私がプールの授業をサボっているとでも言いたいのだろうか。

ーーまあサボっているのだけど。
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