あの時からずっと、君は俺の好きな人。
「大変! 私おばあちゃん家分かるから、すぐ届けに行ってくるね! 藍、その間お店お願い!」

「う、うん」


私が頷くやいなや、なっちゃんは鍵を引っつかむとダッシュで店から出て行った。

お店のピークは過ぎ、現在店内にいるお客さんは若い男性1人のみ。まあ、なっちゃんが少しの間いなくても、なんとかなるだろう。

すると男性がレジの方へやってきた。あ、お会計かなと思ったが、パンを乗せるトレイも、袋詰めした食パンや焼き菓子も、持っていない。

不審に思って私は男性の顔を見る。ーーすると。


「……ねえ、どうして連絡くれないの?」


低い声で彼は言う。大学生くらいで、眼鏡をかけた地味な男性。心当たりがまったくなくて、私は首を傾げた。

すると男性は少しイラッとしたような顔をした


「前に連絡先渡したよね?」

「ーーあ」


その言葉でやっと思い出した。美結にも言ったけれど、先日店番をしている時に私に連絡先を書いたメモを渡した男性だ。
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