あの時からずっと、君は俺の好きな人。
ブス、は少し傷ついたけれど、まあ無事にいなくなってくれたからいいか。


「ーー大丈夫だった?」


男が去ってから幾ばくかして、水野くんが私の顔を覗き込みながら言う。


「え……あー……」


怒涛の展開だったし、水野くんに彼女と言われたこともあり、私はうまく言葉が出ない。

すると水野くんがはっとしたような顔をして、私から素早く離れた。私の肩をいまだに抱いていた状況に気づいたようだ。


「あ、ごめんね。触っちゃったり俺の彼女とか言っちゃったりして。……ああいうタイプは、こうすればすぐ諦めると思って」

「ーーうん」

「カレーパン買いに店に来てみたらさ、最初に吉崎さんがあの男に絡まれてるのが見えて。咄嗟の行動だったんだ。ーー何事も無かったみたいで、よかったよ」


私をじっと見て、水野くんが優しく笑う。


「ーーありがとう」


落ち着きを取り戻した私は彼に向かって微笑み返す。

すると、急に深い安心感が湧き上がってきて、思わず力が抜けてその場にしゃがみこんでしまった。
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