あの時からずっと、君は俺の好きな人。
そして水野くんは静かに立ち上がり、踵を返して店舗の方へと戻って行った。なっちゃんからカレーパンを買って帰るのだろうか。

なっちゃんがこっちに来るかもしれないので、私はとりあえず自分の部屋へ避難することにした。

よたよたと歩きながら、階段を登って自室へ入る。

すると、本棚に立てていたはずのアルバムが落ちていて、中に挟まれていた写真が少し床に散乱していた。

ーー何度か私が捨てようとゴミ箱に入れたアルバム。しかしその度になっちゃんが気づき、本棚の定位置に戻されているアルバム。

そのアルバムには、生前の両親との記憶が詰まっていた。

本気で捨てたいのなら、燃やすなり山奥に捨てるなりできるはずだ。しかし私にはそれができなかった。

ーーそこまで過去を捨て去る勇気がなく、どこかでなっちゃんに止めて欲しいと思っているからなのだろう。

だけど私はあの事故以来両親の写真が見れていない。見たら自分がどうなってしまうのか、想像もつかなくて。怖くて。
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