あの時からずっと、君は俺の好きな人。
水野くんと無理に接する必要のない位置なので、とりあえず現時点では助かった。

いつも遅刻ギリギリまでメイクとヘアセットに勤しんでいる美結は、当然まだいなかった。私は通学鞄を開けて、1人授業の準備を始める。


「えー……やだよ朝から」


水野くんが少し眠そうな顔で言う。寝不足なのかな。

ーーもしかして昨日の私のことを心配してくれたのだろうか。なんて、自意識過剰かな。


「俺は水泳大会のために部活休んでるんだけど?」

「ーーう。はいはい、わかりました」


冗談交じりに意地悪く言う新田くんに痛いところを突かれ、水野くんは苦笑を浮かべながら了承する。


「よし、じゃあ涼太も行くよ」


後ろの席の涼太くんに声をかける水野くん。内藤くんは相も変わらず、机に突っ伏して寝ていた。水野くんの声ごときでは起きない。

そんな内藤くんの頭をつつき、「ほら、サッカーに行くぞ」と、水野くんが耳元で囁く。内藤くんはやっとゆっくりと顔を上げた。
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