あの時からずっと、君は俺の好きな人。
脱線事故の遺族達は、鉄道会社との慰謝料の交渉の場や慰霊登山などで、何度も顔を合わせている。

しかし、水野くんの姿をそれら集いで見たことは無かった。

ーーだけど水野くんも家族がいない。それも、全員。

加藤さん達が言っていることが真実かどうかは分からないけれど。

もし本当だったとしたら、そんなの、私と同じ境遇じゃないか。


「明るそうに見えるけど、親友や彼女になるような人には悩みを吐き出すタイプかもねー」

「それなら私が癒してあげるのに〜! あーあ。水泳大会の係やればよかったなあ。そしたら水野くんだけじゃなくて、新田くんや内藤くんとと仲良くなれたのにさあ」


加藤さんがちらりとこちらを見た。

その目つきは鋭く刺すようで、怨念めいた負の感情すら見えた気がした。まだ係のこと根に持ってたのか。

私は少し呆れたが、加藤さんのことなんてどうでもいい。彼女の視線には気付かないふりをして、私は再び水野くんのことを考え始める。
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