あの時からずっと、君は俺の好きな人。
「うん……さすがに3年生に勝つのは難しいかもね」


最近目にした3年生の練習の様子を思い浮かべながら私が言う。ーーすると。


「そうかな? 結構行けそうな気がするんだけどなー。みんな頑張ってるしさ」

「行けそう……なの?」

「たぶんね。美結ちゃんも初めに比べたら全然早くなったし……あとは中継ぎをいかに早くやるかが大事かな……?」


記録ノートを見ながら、水野くんは思考を巡らせていた。その様子は真剣そのもので。

私はいたたまれなくなった。ーーどうして、この人は。


「ねえ、どうしてそんなに頑張れるの……?」


私は俯きながら、彼に視線を合わせずに言った。水野くんから「えっ?」という声が聞こえてきた。


「どうして、そんなに楽しそうにできるの? 水泳大会の練習の時も、新田くんや内藤くんとかと話している時も、カレーパンを購買で買おうとしていた時も」


そこで私はゆっくりと顔を上げて、彼に視線を合わせた。


「水野くん、家族いないんでしょ? ーー私と同じで」
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