あの時からずっと、君は俺の好きな人。
「だからなんとなく、俺にもそういう意識があってさ」

「そういう意識って……?」

「人はいつ死ぬかわからないっていう意識」


はっきりとゆっくりと、私に聞かせるように彼は言った。


「親もさ、病院であったこととか俺には言わないんだけどね。でも、ふとした時に「後悔しないように生きろ」とか「1人でも生きていけるようにしろ」的なことは、しょっちゅう言われてたんだ」


水野くんは少し寂しそうに笑った。ご両親の言葉を自分でも口に出して、2人のことを思い出したのかもしれない。


「だから……俺はこうなんだと思う。自分では普通にしてるつもりなんだけどね。そっか、いつも楽しそうに見えるのか俺。ーーあれ、それってなんかバカっぽくない? 俺」


あっさりと自虐するので、私はさっきまでの切なさを忘れて、少し笑ってしまった。


「でも、吉崎さんはさ。っていうか、大多数の人はさ。家族がいきなりいなくなるなんて、受け入れられないと思う」

「ーーうん」

「だから、俺がたぶん変なんだよ。ーー吉崎さんみたいに、心を殺して自分を守る方が、自然な気がする」

「え……?」
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