あの時からずっと、君は俺の好きな人。



「すごい! 最初より10秒も早くなったよ!」


私は飛び上がってストップウォッチを掲げる。

三上さん以外のみんなは私に駆け寄り、リレーのアンカーの水野くんは、プールの中でゴーグルを額に上げ、驚いたように私を見ていた。


「すげー! どんどん早くなんじゃん!」


私の傍らで嬉しそうに微笑んで新田くんが言う。


「私もう足引っ張ってないよね!? 大丈夫だよね!?」

「うんうん、もちろんだよ」

「ーーすごく頑張ってるよ」


興奮気味に言う美結に、優しそうに頷く坂下さんと、それに同調する内藤くん。

三上さんは私の近くに来たくないのか、少し離れたところに立っていたけれど、ちらりと横目で見ると満足そうな顔をしているように見えた。


「これ、マジ優勝狙えるんじゃね?」


水野くんがプールから出てきて、私の横でいつもの屈託のない笑みを浮かべて言う。

本当に、このタイムなら狙えるかもしれない。私は素直に嬉しさを覚えていた。自然に笑みがこぼれる。

こんな風に、心から「嬉しい」と思えたのはいつぶりなのだろう。
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