【紫・超短編・画】最後のキリスト教徒(スト漫のシナリオ)
最後の・・・
女は清潔な人間に見えるAndroidだった。
長い髪は一つに束ねられていた。綺麗な黒髪に赤と金の眼(まなこ)のオッドアイだ。
持ち主の四大生くらいのスキルの男、ひとりこっきりの人生相手をするべく、昔に起動された存在。他の仲間の栄養も喰らい彼一人の人間の代わりとして生きてきた。もう世界には二人しか存在しない。
赤黒い海を回りに建てられたかっては船だった、海にそびえたつ水族館。それが二人の城だった。そのたった一つの水槽の中に活きた海が小さく再現されていた。本当の外とは違い美しい藍色に赤や青や黄のカラフルなコバルトスズメの様な熱帯魚達が息づいてる。
揺らめく海草にまみれ、その様は美しい。だが、彼女が命ぜられ従った証が、水槽に亀裂としてあった。彼のストレスの為に彼女は、破壊行動を行い、この施設はもう長くは持つまい。若い彼のバースデーはその二つの生活の終わりを予感させた。彼は最後のキリスト教徒だった。つまり最後に在った宗教はソレだった。彼には生命の死への欲望が性慾の代わりに、抑えられていた。
彼女は知っている。
やがて訪れる二人の最後が、割れた水槽の小さな亀裂に血を捧げた彼の血潮と死骸が水槽にゆらめき、魚達と終わろうとしてる様を彼が希望している。ソレは、彼女を創ったプログラマーが設計したシナリオで、彼は彼女に、そう願うようにサブリミナルされていたからだ。彼女は乞う最後の瞬間を。何故なら彼女はもうサブリミナルのプログラムが、彼女自身の本性の様に想えるくらい壊れていたから。

彼女は夢みる。



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