セカンド・プライオリティ
見える言葉と見えない気持ち SIDE涼
美己からメールの返事が来たのは、2日後のことだった。
<お疲れさま、涼くん。颯くんが出られないってなると、お店大変だね。私は大丈夫だから、涼くんもあまり無理し過ぎないでね。>
「なんて出来た彼女さんなんですか!美己さん!」
「っ、おい!なに勝手に覗いてるんだよ」
いつの間にか後ろにいた太一が、グラスを拭きながらしれっと肩越しに俺の手元を覗き込んでいた。
「ちょっとぐらいいいじゃないですか〜」
「だめ」
「ケチな男と言葉足らずな男は愛想尽かされますよ」
「お前の経験談か?」
「う…っ」
「ちょっと1本吸ってくるわ」
痛いところをついたらしい俺の台詞に一瞬口ごもった太一が息を吸い込んで再び話出そうとしたけれど、長くなりそうな気がしてさらっとその場を離れた。
後ろ手で裏口のドアを閉め、そのままズルズルと腰を下ろす。
「私は大丈夫、か…」
大丈夫。それはいつの間にか俺たちの間でよく交わされるようになった言葉。
聞き慣れた、使い慣れた言葉のはずなのに。なぜか今回はそれが妙に引っ掛かりを覚えた。