アーティスティックな男の子。





「…ゆき、ほら早く。貴女が最後よ。」


『はーい。私は天才作曲家の葉山ゆき!17歳!音楽学科作曲家コースだよ。みんなよろしくねー。』


「…初っ端から飛ばすな、お前。ま、俺も天才だけど。」


まさに堂々。


『えーと、玖音だっけ。やけに自信満々だね。』


「一応、場数は踏んでるからな。まあ天才なことは変わんねぇけど。」


『うん、私見たことないから分かんないけどね。』


「…は?お前、俺の事知らねーの…?!」


『え?だから自己紹介したんだよね?』


「…ゆき。一応この人と私、芸能人だから。割と有名な。」


『おお、自分で言うところ良いね。ゆーても私の家、テレビ見ないんだよね。ゲームしかしない。』


「…こういうやつなの、葉山ゆきは。」


「…あー、納得した。」


「何、ゆきちゃんゲームすんの?俺も結構やるんだよねー。」


『お、確か君は尚斗…だったよね。ゲーヲタ仲間発見。基本何ゲー?』


「RPGか格ゲーかな。」


『おー、じゃあ《ワズラド》やってる?』


今流行りのスマホRPG。


「もち。」


『お、じゃあコードネームで分かるかな…。私《ゆーきゃん》っていうんだけど。』


「…は?!《ゆーきゃん》ってお前だったの!?マジかよ!!」


『あれ、私有名?』


「有名に決まってんじゃん。毎回ランキング二位以上とりやがって。」


『尚斗はコードネーム何?』


「《RONE》」


『えっ…《RONE》だったの…!?毎回ランキング三位の。』


「いずれは俺が一位になるから。」


『ふっ、無理無理。今回のイベも200000pt差以上あるじゃん?これから私を越してランキング一位になるのはもう無理だね。』


「無理じゃねーし。あー、クソ、帰りてぇ。」


『そこは同意。』


「ちょっとそこのゲーヲタ。そろそろ黙って。」


『ごめんごめん。予想以上に盛り上がった。』


「ハァ…帰りたい。」


『帰らないで。…えーと、桃李先輩と透先輩ですよね。よろしくお願いします。』


「…ああ。」


「うん、よろしくね。」


『ところで、主演とかもう決まってるんですか?脚本は?衣装は?演出家は?音響監督は?てか総合監督は??』


「迫るな。落ち着け。」


『すいません。』


「あはは、大丈夫だよ。でもまだ何も決まってないんだ。一応当て書きにしようと思って。」


『あ、そうなんですか。当て書きなら役に入り込むのも早いだろーし…。うん、良い考えだと思います。』


「芸術祭は11月だし、全然余裕はあるよね。芸能活動してる人はスケジュール確認しておいてね。」


「ええ、分かったわ。」
「分かりました。」


「それで、主演のことなんだけど…やっぱりみんなやりたいよね。」


『主演は桃李先輩が適任だと思いますよ。』


「…俺…?」


「は!?なんでだよ!?」


「理由が聞きたいわ。私たちは適任じゃないって言うの?」


『いや、そういう訳じゃないよ。充分真希も玖音も凄いよ。ただ、一番練習に打ち込める人が桃李先輩だけって訳で。』


「あれ、俺は?」


『舞台経験があまり無いとみた。』


「…まあ、舞台っつったら、二年の二学期からだからな。」


『尚斗はかなり器用だからいきなり主演も多分務まるけど、今回は脇役で先輩のこと観察したら良いよ。多分、結構学べるはず。』


「まあ、頑張るわ。」


…ウン、やる気無さそうだなー。



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