アーティスティックな男の子。
『…うん、いいんじゃない?』
「…そうですね。」
『ただピアノとシンセサイザーの切り替えがなあ…。制服だとぱっと動けるけど、ドレスだからなぁ…。』
「2曲目と3曲目の間の時間を伸ばせばいいんですよね。」
『うん。1、2曲目に使うから。』
「じゃあ一旦薄い黒幕を降ろしてたらどうですか?」
『その間無音っていうのもアレだよ?』
「ギターとベースとドラムが音を出してれば大丈夫ですよ。」
『とんだとばっちりだねー。その案乗るけど。あ、最初シンセサイザー置いとくのは?ピアノは上手に置いといて、薄い黒幕が降りたら動かして中央に。シンセサイザーは下手に移動ってのは?』
「場所が空いてるかどうか見てきます!」
「薄い黒幕が降ろせるか確認してきます!」
「上に許可取ってきます!」
おお、スタッフ(生徒)が働いてる。
むしろ生徒に見えない。
「もう一度、流れの確認をしてみましょう。」
『そうだね。』
『さって、とりあえず柊とのコラボはばっちしだね!』
「そうですね。」
『あとは私のソロですね…。』
「頑張ってください。」
『頑張るよ…それに、今回は特別枠もあるし…。』
「…特別枠?」
『あ、何でもない。』
そうだった、機密事項だった。
「なんですか、それ。聞いてません。」
『聞かないで、詰め寄らないで。機密事項なの。』
「じゃあ口滑らさないでください、ゆきさん。」
『面目ない。』
「…まあ、機密事項なら仕方ありません。」
『ごめんねぇ。多分、柊達喜ぶと思うからさ。』
「…はぁ…。まあ、一足先に楽屋に戻ってます。」
『はーい。』
さてさて。
「ピアノの位置はさっきと同じ場所で、中央に一つですよね。」
『うん。照明はピアノ一点の光だけ。あとはプロジェクションマッピングチームの方々がやってくれるはず。』
客席から手を振ってくるチームの方々。
私も振り返すという。
『とりあえず合わせよう。私もどんなものになるか分かんないからね。』
うん、初めての試みだ。
なんだかワクワクする。