アーティスティックな男の子。





『…うん、いいんじゃない?』


「…そうですね。」


『ただピアノとシンセサイザーの切り替えがなあ…。制服だとぱっと動けるけど、ドレスだからなぁ…。』


「2曲目と3曲目の間の時間を伸ばせばいいんですよね。」


『うん。1、2曲目に使うから。』


「じゃあ一旦薄い黒幕を降ろしてたらどうですか?」


『その間無音っていうのもアレだよ?』


「ギターとベースとドラムが音を出してれば大丈夫ですよ。」


『とんだとばっちりだねー。その案乗るけど。あ、最初シンセサイザー置いとくのは?ピアノは上手に置いといて、薄い黒幕が降りたら動かして中央に。シンセサイザーは下手に移動ってのは?』


「場所が空いてるかどうか見てきます!」


「薄い黒幕が降ろせるか確認してきます!」


「上に許可取ってきます!」


おお、スタッフ(生徒)が働いてる。


むしろ生徒に見えない。


「もう一度、流れの確認をしてみましょう。」


『そうだね。』







『さって、とりあえず柊とのコラボはばっちしだね!』


「そうですね。」


『あとは私のソロですね…。』


「頑張ってください。」


『頑張るよ…それに、今回は特別枠もあるし…。』


「…特別枠?」


『あ、何でもない。』


そうだった、機密事項だった。


「なんですか、それ。聞いてません。」


『聞かないで、詰め寄らないで。機密事項なの。』


「じゃあ口滑らさないでください、ゆきさん。」


『面目ない。』


「…まあ、機密事項なら仕方ありません。」


『ごめんねぇ。多分、柊達喜ぶと思うからさ。』


「…はぁ…。まあ、一足先に楽屋に戻ってます。」


『はーい。』


さてさて。


「ピアノの位置はさっきと同じ場所で、中央に一つですよね。」


『うん。照明はピアノ一点の光だけ。あとはプロジェクションマッピングチームの方々がやってくれるはず。』


客席から手を振ってくるチームの方々。


私も振り返すという。


『とりあえず合わせよう。私もどんなものになるか分かんないからね。』


うん、初めての試みだ。


なんだかワクワクする。










< 39 / 82 >

この作品をシェア

pagetop