アーティスティックな男の子。







《雨月》


それは満月の夜の雨。


薄雲の中に、美しく妖艶に光る月。


一粒の滴が、静かに降りる、悲しき雨。





《花鳥》


それは花舞い散る、自由の翼。


願いと共に、目覚めよ雛鳥。


華のように咲き乱れる、美しき鳥。




ー暗幕ー




《風雫》


それは吹き荒れる風と共に、涙の雫。


無邪気な風と、無垢な雫。


哀しき運命は、一粒の想い。








「…っ…お疲れ様でした、ゆきさん。」


『…ふぅ…うん、お疲れ。』


「後は貴女の番です。頑張ってください。」


『うん、ありがとう。』


「ほら、メイクと髪、直すよ。」


『ありがとう、ハルくん。』


…直してもらい、アナウンスも入った。


ステージにはピアノだけが置いてある。


一点の光に私は近付き、座った。







《花紫》


それは運命と共に、芽吹く命の光。


尽きぬ想いは咲き乱れ、燃ゆる花紫。


薄紫と紅の象徴は、ただ願いをと。




美しく妖艶に光る、悲しき滴、雨月。


花舞い散る自由の翼と、目覚める願い、花鳥。


哀しき運命と、無邪気で無垢な、風雫。


尽きぬ想いと、


芽吹く命に幸あれと、


願う、花紫。









さぞ幻想的であっただろう。


会場の皆は魅入っていた。


「ふふ、流石は葉山ゆきだ。」


アーティストであり、エンターテインメントとして客を楽しませる。


これ程、幻想的なものはなかなかない。


自由奔放と困った問題児でも、ステージ上では誰よりも魅力的で、誰よりも輝いている。


「何、ニヤついるんですか、理事長。」


「おや、秋君。久しぶりだねぇ。」


「ウチの妹が何回もお世話になったようで。」


「ふふ。」


「あんまりちょっかい出すと嫌われますよ。」


「大丈夫だよ。毎回追い払われてるけど、嫌われてはないから。」


「ははは。そうですね。」


「ところで、何か面白そうなこと考えているらしいね?」


「…さあ、どうでしょうね?じゃあ俺はもう行くので、先に失礼します。」


「ふふ、頑張ってね。」









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