アーティスティックな男の子。
「…ほら、行くよ。」
『はーい。』
カツカツカツ
『よいせ…と。うん、ありがとー。』
「ま、俺やスタッフ達は客席にいるから。」
『え、舞台袖でよくない?』
「よくないからわざわざ客席に行くんでしょ。」
『そうなの?』
「…ま、頑張って。」
『うん、ありがとー。』
「…配置OKです。」
「では幕開けでーす。」
「特別プログラム、今回はとある人が歌ってくれます!」
「えー、誰なんだろう!!」
司会者二人が場を盛り上げる。
「あー、私も客席で見たかったなぁ。」
「大丈夫。BluRay&DVDがあるからね!みんな買おうね!」
さり気ない宣伝も入れつつ。
「その人はー、イケメンで背が高くて白衣g」
ザワッ
「うわあそれ以上喋っちゃダメ!!…コホンッ、これで何人かは検討ついちゃう人はいるかと思います。」
「合ってますよー、その人で合ってますよー。」
ザワつく客席。
司会者二人のスポットライト以外は真っ暗な舞台。
その幕が徐々に上がる。
そして一点の光。
ピアノ一台と、一本のスタンドマイク。
そこには、先程まで演奏していた葉山ゆきがいた。
「「「「「キャァァァァッ!!!」」」」」
疑惑が確信となった瞬間だった。
「それでは皆さん!」
「どうぞお楽しみください!」
ギター、ベース、ドラムがリズムを刻みながら激しく音を掻き鳴らす。
上手から出てきたのは、
澄空秋。
「いやー、盛り上がってんね〜。」
「「「「ギャァァァァァァァァ!!!」」」」
女子の悲鳴がヤバい。
「これ俺出なくてもよくない?」
私の肩に寄りかかる腕を抓る。
「痛い痛い。ほら、ゆきも何か喋れば?」
差し出されるマイク。
『私が喋るよりも秋に歌ってもらった方がいいよね?』
「「ゆきも喋ってー!」」
『え、マジで?…んじゃあ、まあ少し。…先程は私の作曲した演奏を聞いてくださって、ありがとうございました。どうでしたか?感想を、秋、どうぞ。』
マイクをもう一本渡されてたらしい。
秋がへらへらと笑う。
「良かったと思うよ、うん。」
『適当だなー。』
「でもホント、さすが妹ながらあっぱれ。その曲を俺がまた歌うんだけどね?」
また悲鳴が。
『ほら、みんながお待ちかねだよ、お兄ちゃん?』
「そうだな、妹よ。」
また悲鳴が。…今のどこに悲鳴の要素が?