アーティスティックな男の子。





『じゃ、タイトルコールよろしく。』


「作詞、澄空秋。作編曲、葉山ゆきで、《ZERO》。」


「「「「キャァァァァッ」」」」


いわゆる、強くて、カッコイイ、ロックな曲。


この曲は秋が20歳の誕生日に私が送った曲。


余程気に入ったのか、次の日には完璧に歌えるようにしてきて、いきなり講堂をジャックしたかと思うと爆音で歌い出した


という伝説がある。


それをまたアレンジしたので、恐らく洗練されたとは思う。


ピアノも一段と難しくした。


八度の連打や調の移り変わりが激しい。


そしてとにかく、秋よ、歌うスピードが速い!!


『っ…。』


指が死にそう。


客は席を立ち、もうはしゃいでいる。


一種のライブハウスだ。


「…っ!!」


激しい曲だけど、音程は安定していて心地いい。


だから、歌い終わるのは寂しいよね。


「Foooo!…っいやー、激しいわ、やっぱ…!」


『…指が死ぬ…。』


「よし、じゃあ次はデュエットしようぜー!」


「「「「「「「Foooooooo!!!」」」」」」」


『え?デュエット?…き、聞いてないけど。』


「秋月!秋月柊!!ステージに来いよ!!」


『え、柊?』


柊も凄い戸惑ってる。


だがしかし、周りのノリは強い。


押されるがままにステージに立たされる。


「よお!秋月。」


「すみません、聞いてないんですけど。」


「大丈夫大丈夫、お前も歌えるから。」


「それ以前なんですけど。ちょっとゆきさん?どうにかしてください。」


『…無理。だって私の兄貴。』


「……。」


「秋月ぃ、お前校内でなんて呼ばれてるか知ってるか?」


「はい?何ですか、いきなり。」


「《歌のプリンス》だってよ。」


「…初めて聞きました。」


「ちなみに俺は《天才ヴォーカリスト》。」


「上げてから落とすのやめてください。この人酔ってませんか。」


『良い気分なんだよ、今。…で?デュエットする曲って何?』




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